12月18日出版記念セミナー報告
出版記念セミナー~よいケア文化の土壌をつくる~VIPSですすめるパーソン・センタード・ケア第2版
2021年12月18日、出版記念セミナー”よいケア文化の土壌をつくる:VIPSですすめるパーソン・センタード・ケア第2版”がオンラインで開催されました。監修の水野裕先生、翻訳に関わった中川経子氏、当会の村田康子より、第2版出版にまつわるエピソードなど、お話しいただきました。
水野先生からは、文化の継承の難しさについて具体例を用いてお話いただきました。どの現場でも、新人や学生を受け入れていると思いますが、彼らはスタッフの行動を見ていて、その行動を文化として引き継いでいくこと、スタッフの行動が本人の尊厳を維持出来ないような関わりだった場合、学生はそれを見習うべき“良い行動”だと認識し、他の人たちにもすぐに広がっていくというお話でした。日々新人指導や学生担当など担う中で、私達の影響は計り知れず、身を引き締めて臨まなければならないと思いました。また、第2版では、ケア提供者だけではなく、政府高官など、制度を考える立場の人達にも“よいケア”と何であるかを、それぞれの立場で理解できるように、その意味するところが具体的に書かれており、認知症の方々の生活がより良くなるように文化を変えていくためには、一スタッフ・管理者・行政など、それぞれの立場で出来る事を行って行く必要があることを教えていただきました。
中川氏からは、ドーン・ブルッカー氏、イザベル・レイサム氏から寄せられたメッセージを翻訳してご紹介いただきました。ドーン氏とイザベラ氏からは、実践に活かすために言葉で伝えることの難しさ、最も傷つきやすい方々の人権を守ることの難しさ、認知症の方の人生をよりよくしていこうとしている人達が今ここにいることに感謝の言葉をいただきました。中川氏は、翻訳のエピソードと合わせて、認知症の人の家族としての体験についてもお話しくださり、本人の尊厳が維持出来ているのか、認知症の方だけではなく誰しもが人としての尊厳を維持出来る関わりを私達は出来ているのか、深い思いを語っていただきました。またVIPSの要素は指針であり自ら振り返り問うべきものであること、認知症ケアに携わっている方々は、chapter2の“組織の文化”だけでも、ぜひとも読んでいただきたいとのことでした。
村田からは、初版と第2版を比較しながら、言葉や訳がどのように変化してきたか、いくつか例を挙げて紹介がありました。例えば、“その人の視点に立ったリスク管理(第1版)”→“リスクがあっても人々がしたいことを支援すること(第2版)”となっています。以前、水野先生も、私達は日々の中で何らかのリスクを冒しながら生活しているのに、何故認知症だからと言ってそのリスクを全部除去しなければならないのか、リスクを背負いながらも本人がしたいことを出来るように環境を整えることが私達の出来ることであると話されていたことを思い出しました。初版から第2版出版まで約10年が経過し、人としての尊厳・権利を医療者としてどのように維持出来るかがより重要な視点になってきているという時代の変遷を反映した内容になっていることに、あらためて気づかされました。
“よいケア文化”をつくること、継承することは、とても忍耐のいる難しい挑戦だと思います。しかし日々の自分の“行動”を変えることは、明日からでも自分にも出来ることだと思いました。
KIMONO