当法人では、年2回ニュースレターを発行して活動状況を知って頂き、また、ホームページでは研修のご案内やご報告、情報のお知らせ等を行っています。
〇旧ホームページより
以下、旧ホームページより一部転載いたします。
2019年9月29日
特別ワークショップ“認知症をもつ人とともに地域で生かすクリエイティブ回想法”(報告)
9月29日(日)、Pam&Alex Schweitzer(パム&アレックス・シュワイツァ)夫妻をイギリスより招聘し、首都大学東京荒川キャンパスにて“認知症をもつ人とともに地域で生かすクリエイティブ回想法”のワークショップを専門職向けに行いました。
当日は81名の参加があり、ワークショップの内容は講師のパムさんがイギリスで実際に行っている回想ワークについての講義と参加者が認知症の人の思いを体験してみるというエクササイズ(演習)との2部制で行われました。
講義の中で印象的だったのは、話すことはコミュニケーションの単なる一手段にすぎないという事です。あまり多くの言葉を発しなくなった人たちも物品、写真、絵、音楽、メモリーボックスなど慣れ親しんだものを通して、創造性を発揮し自己表現できると話されていました。また、エクササイズでは参加者が1対1で「聞こうとしないこと」と「聞こうとすること」の双方の体験をし、どう感じたか?を話し合いました。前者では「悲しい」、「寂しい」、「辛い」などのマイナスの感情が出て来ましたが、後者では「嬉しかった」、「楽しかった」などとてもポジティブな感情を持ちました。さらに、3人1組で認知症をもつ人、その家族、支援者と役を決めて、「認知症をもつ人を話題の外に追いやり家族の苦労話ばかりする」といったワークもしました。その後、認知症をもつ人も輪の中に入ってコミュニケーションをとるとどう感じたか?のワークもあり、参加者は普段では見ることのない自己表現をしていました。このエクササイズを通して、自分がグループの大切な一員であると感じていること、その人の尊厳を大切にする関わりが重要であることを学びました。
パムさんは講義やエクササイズの間中、参加者に気さくに話しかけて下さり、ユーモアに溢れた親しみやすいお人柄から、私達参加者も楽しく、和気あいあいとこのワークショップを終えることが出来ました。また、建築家で写真家であるパートナーのアレックスさんもパムさん同様、写真や物を見て、臭いを感じて良い気分になる。コミュニケーションは決して言語だけではないと強調されていたのが印象的でした。遠方よりお越しいただき、貴重な体験をすることができ感謝致しています。
<講師紹介>パム・シュワイツァー氏はヨーロッパ回想法ネットワーク代表。長年に渡り回想法や回想劇による多文化間交流や世代間交流に尽力され、中でもRemembering Yesterday,Caring Todayは認知症の本人と家族のための回想ワーク・プロジェクトで1997年以降ヨーロッパで改良、発展を続けながら現在も継続されています。 (伊藤 孝子)
2019年8月11日
実践者のためのパーソン・センタード・ケア学習会Ⅱ(報告)
8月11日に「実践者のためのパーソン・センタード・ケア学習会Ⅱ」を開催しました。午前中は、磯岡氏より「認知症ケアマッピング(DCM)を用いた事例検討」、午後は田邊氏より「心理的ニーズを活かしたケアマネジメント」についてお話し頂きました。DCMは、パーソン・センタード・ケア(PCC)の実践のために開発されたツールですが、磯岡氏の講演は、その具体的なデータを見ながら、実際のケア場面をロールプレイで示すなどして分かりやすくPCCの理念をケア場面で見ていくのかを知ることができる内容でした。午後の田邊氏の講演も具体的ケースを用いてケアマネジメントの中に心理的ニーズを以下に取り入れていくかについてグループで検討しました。今回の学習会Ⅱでパーソン・センタード・ケアの理念の活用について学びました。
2018年6月5日
特別講演会“災害時の認知症をもつ人の支援-パーソン・センタードな視点から考える-”(報告)
2018年5月26日、首都大学東京荒川キャンパスにて開催され、医療介護福祉関連の各専門職の他、一般市民や当事者の方など、151名の方々に参加いただきました。講師の皆様はじめ、ご協力、ご後援頂きました皆様に深く感謝申し上げます。
基調講演は、中村考一氏(社会福法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)より「認知症をもつ人の生活のしづらさとその支援」についてご講演頂きました。認知症による認知機能の低下がどのように生活障がいやBPSDに関連するかからはじまり、支援者の視点だけでなく、当事者の視点や気持ちに立って支援する重要性や、災害時においては特に支援者のふり返りの必要性などについてお話しいただきました。
特別講演ではまず、松永美根子氏(医療法人社団孔子会 介護老人保健施設 孔子の里)より、「熊本地震における認知症の人の支援」として、熊本地震における自らの被災体験や避難所等での支援の体験を通して、認知症の人に地震がどのような影響を与え、それに関わる専門職がどのようなパーソン・センタード的なケアが展開できるかについてお話し頂きました。
遠藤真一氏(社会福祉法人長岡三古老人福祉会研究・研修センター長岡)からは、「東日本大震災における認知症の人の支援」として、中越地震、東日本大震災の時の法人として支援の取り組みや体制についてご紹介いただき、自分達ができることは何か、できたことをふり返り、次に備えていく重要性についてお話しいただきました。
質疑の時間が十分とれなかったことは残念でしたが、アンケートでは、「日頃から地域や法人内でパーソン・センタードな基盤を共有し、いざという時に支え合えるネットワークを築いておくことが大切なことがよくわかった」、「そのために自分が何をできるかを改めて考えさせられた」などの声が多く聞かれました。
2015年5月9日
特別講演会”パーソン・センタード・ケア-今までを振り返り,これからを考える-”(報告)
当日は140名ほどの方にご参加いただき、誠にありがとうございました.
「今までを振り返り,これからを考える」ということで,前半は当NPOの名誉顧問であり,認知症治療とケアの分野の第一人者としてご活躍中の水野裕先生よりご講演いただきました.「認知症は治すわけじゃない(除去することはできない),なんとかうまくいい状で態生きていこう(サポートを受けて今まで通り『人』として生きていける)」という言葉に,改めてパーソンフッドが尊重され,心理的ニーズが満たされることの重要性を再確認いたしました.「縛っているスタッフも同様に傷ついている」という水野先生の優しさをひしと感じながら,パーソン・センタード・ケアは実践的な考えであるので,風土を変革すべく,日々の実践にチャレンジしていきたいと思いました.
また,「“認知症と共に生きる人々”と“私たち”といった区別や隔たりがない社会を,国を超えて実現させるために
GAP(Global Action on Personhood)
を立ち上げた」とのことで,精力的に走り続けている水野先生のすごさを感じました.
後半はパーソン・センタード・ケアとDCM研修会の通訳者・翻訳者として10年来ご活躍され,家族介護者でもある中川経子氏と水野先生の対談で,会場ではリラックスした雰囲気でお話を聴かせていただきました.
中川氏はチャーミングな語り口で「その人を知りたかったらその人の靴をはいてみな(相手を責めるのではなく,このかかわりをどう思うのか,本人にとってどうなのか対話をしていく)」といった核心にふれる言葉が印象的でした.「病院はいらない,いらなくなるような努力を」とのことで,社会全体にパーソン・センタード・ケアの理念を少しずつでも広げていくこと,地道な努力をし続けることが大事だと感じました.
講演会終了後は水野先生や中川氏を交え,熱く楽しい懇親会でした.ご参加くださった皆様,ありがとうございました.
2011年5月11日
特別講演会”認知症の医療とケア”(報告)
5月11日の特別講演会「認知症の医療とケア」を開催しました.当日はあいにくの天気にもかかわらず,177名の方にご参加頂きました.有難うございました.
講師の藤本先生,奥村先生はお二人で登壇されて藤本クリニックの開設当初からこれまで取り組まれたことについてお話しされるのですが,現場のことは奥村先生,病気や診断のことについては,藤本先生とチームワークよく説明されて,これぞ「医療とケアの連携」といった感じでした.
講演の中で認知症の症状とそのことに対するご本人の言葉,言葉の中にあるご本人の思いがありのままに示されているのが特徴的で,お二人の認知症の方に関わられる姿勢が感じられるものでした.記憶障害,実行機能障害,検討識障害,失行・失認,それぞれの症状が現場でどのように表れて,それにどう対応していけばいいのか,また,アルツハイマー型認知症,脳血管性認知症,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症といった疾患の特徴とその関わりについて,具体的に一つ一つお話し頂き,とても実践的な内容でした.バリント症候群による身体定位障害には,色を用いたアプローチをすることで行動がしやすくなるなど,なるほどなぁと思うようなことばかりでした.
また,デイサービスのプログラムや活動内容についても,とても参考になる情報に溢れたものでした.
質疑応答では,病名告知がされていない方がいて,その方が段々できないことが出てきていて,どのように接したらいいかアドバイスを頂きたいとのことでしたが,まず,ご本人にできなくなってきたことをそのまま話すことをすすめられました.ケア現場における告知のあり方(病名を知らせることだけが告知でない)について考えさせられる内容でした.
講演会の後,書籍のサイン会をやって頂きました.当日,ご用意した本は,完売でした!!懇親会も、大勢の方々にご参加頂き,とても和やかな雰囲気で楽しい会となりました.皆さま,どうも有難うございました.
〇これまでのニュースレターより
”巻頭言”執筆者
第1号(2010年) 村田康子氏「NPO1周年を迎えて」
第2号(2011年) 中川経子氏「パーソン・センタード・ケアについて思うこと」
第3号(2012年) 中村裕子氏「出会いを通して」
第4号(2013年) ドーン・ブルッカー氏「英国での取り組み」
第7号(2015年) 仲本しのぶ氏「パーソン・センタード・ケアに支えられた介護相談活動」
第9号(2016年) 内田達二氏「認知症高齢者の生活支援について考える」
第10号(2016年) 桑野康一氏「VIPSの視点で学ぶパーソン・センタード・ケア視聴覚教材ともに歩むの制作に関わって」
第11号(2017年) 村田康子氏「認定NPOとして東京都より認定されました」
第13号(2018年) 渡辺恵美子氏「NPO事業その後、百寿のお祝いに参加して」
第15号(2019年) 水野裕氏「NPO設立10周年に寄せて」
2012年5月25日
特別講演会「パーソン・センタード・ケアを地域に根付かせるために」(報告)
5月25日当日は、350名の方々にご参加いただきました。
D.ブルッカー氏(英国ウースター大学認知症学部長)
「パーソン・センタード・ケアを実践する」
今日の認知症ケアは”認知症とともによく生きる”ことを目指すようになり、パーソン・センタードな視点がより大切になっています。ただ、パーソン・センタード・ケアをある一つの介入手段と考えるのではなく、認知症ケアにおける「私たちの行動指針・基準と考え、認知症をもつ人のパーソンフッド(一人の人として周囲に受け入れられ、尊重されていると実感すること)を維持しようと取り組むことが重要と話され、パーソン・センタード・ケアの実践を具体的にケースで示していただきました。
長谷川和夫氏(認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長・生マリアンナ医科大学名誉顧問)
「パーソン・センタード・ケアー診療医としての立場からー」
認知症の中でアルツハイマー病の人が一番多く、アルツハイマーの方を簡易に診断できるツールとして長谷川式認知症スケールは広く活用されています。臨床医としては、初診の入り口から看取りの出口まで暮らしの旅を、本人と家族と共に考え、支えていくことが重要と考えています。診療時間に限りがありますが、その中でできるだけ認知症の方とそのご家族のお話しを伺うようにしておられるとのことで、認知症ケアの心構えとして、感性(センス)・心をひらいていること・謙虚であること・前向きな明るさと希望とまとめられました。
(内田 達二)
2014年5月11日
特別講演会「認知症を生きる彼・彼女から見た京都式地域包括ケア」(報告)
5月11日の特別講演会には、123名の方にご参加頂きました。有難うございました。
まず最初に京都大学医学部附属病院の武地先生より、認知症の医療・ケアのシステムや取り組みを俯瞰した上で、「2012年京都文書」について説明して頂きました。京都文書では、「認知症の疾病観を変えることから始める」ことが重要で、そのためには早期の段階から出会うことが大切であるが、それを阻害する問題として、医療・ケアにアクセスする側、受ける側に問題がある点を明確にして、この「入り口問題」を解決していくことが重要であることを述べられました。その入口問題を解決する機能が認知症カフェにあるとして、「早期発見、対応、本人の社会参加、家族サポート、ボランティアの育成」など行うことができると説明されました。そして、実際のオレンジカフェ今出川の取り組みもこれらに準じて行っておられ、シルバー人材のボランティア(有償)も導入されているようです。認知症カフェの在り方についてとても示唆に富んだ内容でした。
後半は(社福)京都福祉サービス協会小川事務所の高木はるみさんから、専門職ボランティアとしてオレンジカフェにかかわられている体験を通して感じていることや課題についてお話し頂きました。オレンジカフェ今出川では、スタッフの初期研修として、パーソン・センタード・ケアを学んでもらい、その理念に立ったケアを心がけている点や実際の関わりの中での助言(OJT)、閉店後のミーティングなどスタッフの学びの機会を提供することの重要性について述べられました。こういった取り組みが、カフェスタッフの新たな認知症カフェの設立に繋がるなどカフェの活動は広がっているそうです。
認知症カフェの取り組みが盛んになっておりますが、認知症ケア全体から見たカフェの機能はとても重要であり、その機能を発揮できるカフェの設立は重要であり、認知症の「入り口問題」への取り組みの一助になるのではないかと痛感しました。
講演会にあわせて、先生の書籍の販売をさせて頂いたのですが、開始時に完売となってしまい、希望される方全員に販売できませんでした。すみませんでした。希望される方には先生よりサインを頂きました。有難うございました。
懇親会は、昨年好評だった、下町の洋食屋 山惚で開催しました。こちらにも20余名の方にご参加頂き、とても和やかな雰囲気で楽しい会となりました。ご協力頂きました講師、ボランティア、参加者の皆さま、どうも有難うございました。
(内田 達二)
2017年6月17日
特別講演会”認知症をもつ人と共に歩むケア・社会へ”
基調講演1: ドーン・ブルッカー氏
「組織の文化とパーソン・センタード・モデル」
今回の講演では,「施設のケア文化」に関する大規模調査研究(CHOICE)についてご講演頂きました。スコットランドとウェールズ,イングランドの11施設を事例調査した結果,卓越した質のケアを提供している施設は,「活気が感じられ,刺激があり,創造力や感受性にあふれた取り組み」がされていたとのことです。このような様子は,日本にも当てはまり,万国共通ではないかと感じました。また,入居者,スタッフ,管理者,訪問者に対する,観察や文化人類学的手法での調査から,よいケア文化には7つの特徴があるとのことでした。それらは,心理的ニーズの花を支える幹や葉っぱ,土壌のシェーマとしてまとめられていました。私はその中で「認知症の人もケアをする人もお互いに重要な存在」であり,「卓越したケアを実践するために一致団結して取り組む」という土壌に当たる部分がとても重要と感じました。このシェーマはVIPSモデルのバージョン2に当たり,日本でも『VIPSですすめるパーソン・センタード・ケア』の第2版が1日も早く読んでみたいと思いました。早期に翻訳されることを期待しております。
基調講演2: ヘイゼル・メイ氏
「パーソン・センタード・モデルをケアに生かす」
ヘイゼル先生は作業療法士で,英国でパーソン・センタード・モデルを用いた介入調査,エビントン・センター病院のプロジェクトについて講演頂きました。ヘイゼル先生のお話しの中では,パーソン・センタード・モデルの「脳の障害」について詳しく話されている点が特徴的でした。認知症高齢者の生活障害を医学モデルからとらえた上で,そこから生じる生活の困難さの体験については,心理的ニーズを重視して支援していくということを明確に示されていました。エビントン・センター病院の介入では,職員にパーソン・センタード・モデルの研修と病院で観察された「個人の価値を高める行為」についての振り返り,パーソン・センタードな転倒防止に対する事例検討会を6か月間実施した結果,転倒の回数が低下した上に,研修の効果としてスタッフとして対応方法に関する知識が増えたそうです。ヘイゼル先生の講演を聞いて,同じ作業療法士の職にある私は,英国の作業療法士の役割について興味を持ちました。日本でもリハビリだけでなく生活の支援に向けてケアスタッフと共に動いていくべきではないかと考えさせられました。
特別講演:水野 裕氏
「私たちの常識は正しいのか」
特別講演会の後半は,当NPO代表理事の村田康子氏を座長に,我が国のパーソン・センタード・ケアの普及に尽力を注がれている水野裕氏による講演と質疑応答といった内容でした.水野氏の講演では,一般社会で作られた認知症のイメージ(常識)がいかに認知症の人の生きづらさを助長し,社会から阻害されて不幸な状態を作っているか,ということを様々な視点からお話いただきました.具体的には,古い常識・決めつけ下での日本の自動車運転免許制度についてお話があり,質疑応答でも活発な意見交換がありました.私ごとですが,認知症を抱えている方々と日々接する中でいつのまにか古い常識にとらわれてしまっている自分に気が付いたり,はっとさせられるお話がたくさんありました.パーソン・センタード・ケアを掲げて実践していくことの意義を噛みしめ,社会の常識を変えていくためにも,小さなことを見逃さない,楽をしない,言葉を正しく使う等,あらためて振り返ることが出来た講演でした .(西脇 聡実)